※この記事では、家族との日常の中で感じた成長や想いを綴っています。
離婚して、私たちは県営住宅に引っ越した。
実家までは、歩いて10分ほどの位置、ベランダから用水路が見えて、その岸には春にはポピー、秋はコスモスが咲く。
建物は恐ろしく古いけれど、日当たりも良く、私はまぁまぁ満足していた。
小学3年生だった息子。
かなり後になってから、
「引っ越した時、すごいとこに来ちゃった、ってほんとは思ってた。」
とコメントしている。
必要最低限の家だったので、トイレに蓋がついてないし、窓はあるけど、網戸がなかった。
夜中に目が覚めて、トイレに行った。
ぎゃあああああああ!!
あまりのことに大声をあげてしまった。そして、急いでドアを閉めて、どうしようか、と考えた。
外国のタランチュラを思わせるような、手のひらほどもありそうな大きな蜘蛛が壁に張りついていた。
トイレに行きたい。だけど、入れない。これは困った事態。
息子のところに走った。
「ねぇ、ねぇ!りゅうちゃん!起きて!蜘蛛、大きい蜘蛛がいるの!どうしよう、取って。」
うぅぅん…。なに…。
ありがたい、起きてくれた。
寝ぼけた息子にもう一度要件を言い、なんとかしてほしいと懇願した。
虫取り網がなかったので、ビンをくれ。と言い、なんとか、その大蜘蛛を捕えてくれた。
あ、ありがとーう、ほんとにごめんねぇー!
感謝しながらトイレを済ませて、帰ってくると、息子がスマホを貸してくれという。
「お母さん!!この蜘蛛、すごいよ!G(あの嫌いな害虫です)より速く動いて捕えることがあるんだって!!殺しちゃいけないやつなんだよ!!」
興奮して喋っていて、忘れたけど、正式名称も教えてくれた。
「え、そうなの。そりゃ、すごいね、お外に逃がしてあげようね。」
こんな夜中に叩き起こされて、虫を捕まえてくれと頼んだ母親に文句も言わず、虫の名前と特徴を調べている息子を見て、やっぱり、変わってるなぁ、と思った。
虫が好きな息子を持っていて、本当に良かった、と感謝した夜だった。
あの古い県営住宅は、不便なこともたくさんあった。
でも、あの家があったからこそ生まれた笑い話も、こうして今では大切な思い出になっている。
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