※この記事では、看護の現場で出会った人や言葉を、窓辺で思い出すように綴ります。【癒しの窓辺シリーズ】
フィギュアスケート選手の試合前の様子が中継されることがある。
いつものニコニコした表情は消え、音楽を聴きながら、深く集中した顔になっている。
最終調整をしながら目を閉じ、自分が成功する姿をイメージしているのだという。
私が初めて急変に当たった時。
足がすくみ、頭が真っ白になり、何もできなかった。
先輩が何かを指示しながら心臓マッサージをしている。
救急カートが運び込まれる。
医師が来るまでの間、ナースは自分で考えて動かなければならない。
ショックだった。
看護師を目指した時、私は誓ったはずだった。
知識を持って、堂々と患者さんの前に立てる自分になりたい、と。
だけど現実は、学校を卒業しただけでは急変対応はできない。
考えるより先に、体が動くレベルでなければならない。
あの出来事のあと、私は決めた。
「急変!応援お願いします!」と言われたら、
まず救急カートを取りに行く。
それなら、私にもできる。
院内の勉強会にも何度か参加し、人形を使って心臓マッサージの練習をした。
思っていたよりも、ずっと強く、速いテンポ。
胸骨圧迫は、胸が5センチ沈むくらい。
お年寄りでは肋骨が折れることもある。
イメージだけではできないことがあるのだと、身をもって知った。
この仕事に就く前は、医療ドラマが好きだった。
何も考えずに楽しめた。
でも今は違う。
この場面で、自分ならどう動くか。
何を優先するべきか。
つい考えてしまう。
たとえば、コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-。
大きな事故現場で、次々とトリアージしていく場面。
「痛い!」と訴えている人よりも、静かな人の方が危険なこともある。
意識レベルが変わり、
「この人を優先してください!」と叫ぶシーン。
そんな場面を見ながら、
もう素直に「かっこいい」とは見られない自分がいる。
ジムのお風呂に入っている時でさえ、
「今ここで誰かが倒れたら?」と、ひとりでシミュレーションしている。
そして、はっと我に返って苦笑いする。
でも、不器用な私は知っている。
普段できていないことは、本番ではできない。
ある日の19時頃。
個室の患者さんのもとへ行った助手さんが叫んだ。
「看護師さん!大変!」
駆けつけると、患者さんは仰向けに倒れていた。
頭部から出血している。
肩を叩く。
「大丈夫ですか!」
「う、うん…」
反応あり。
「意識あり。応援呼んでください。先生にもコール!」
トイレに行こうとして転倒したらしい。
名前も言える。
出血部位を確認しながら、
グローブ、止血、バイタル測定。
気づけば、落ち着いて動けていた。
命に関わる状態ではなかった。
でも、もし意識がなかったら。
呼吸が止まっていたら。
脈が触れなかったら。
私はどう動けただろう。
先輩は「慣れだよ」と言う。
でもそれは、ただの慣れではない。
努力の上にある慣れだ。
毎日のイメージトレーニングと、振り返り。
それが、明日の私をつくっていく。
🌸このブログについて
私のブログでは、子育て卒業後の”自分らしい毎日”をテーマに、看護・家族・猫・ポタリングなど、日々の小さな挑戦と気づきを綴っています。
ぜひ、ほっと一息つきながらご覧になってくださいね。☕️🐾
🌱癒しの窓辺シリーズ
忙しい日々の中で、ふと立ち止まる窓辺の時間。病院で出会った人たち、看護の現場で感じたこと、心に残った言葉。
そんな出来事を、窓辺で静かに思い出すように綴っています。


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