たまご焼きの思い出

♪おかあさん

なぁに?

おかあさんっていい匂い…

から始まる、童謡”おかあさん”が大好き。

2番の歌詞は、たまご焼きのにおいでしょう?

と続く

小さな子どもが、大好きなおかあさんにくっついて、見上げる顔や、優しいまなざしのお母さんの姿が目に浮かぶ。

 母は、たまご焼きが得意だ。調理師だった祖父直伝のたまご焼きで、薄い塩味で焼いて、大根おろしをのせて、ちよっと醤油を垂らして食べるスタイルだ。

お弁当には、熱々のたまご焼きを巻き簀に巻いてちょっと置いておいて、巻き簀の柄が入

ったたまご焼きを入れてくれた

友達の甘いたまご焼きを食べた時、本当に驚いた。私も母のスタイルを継承しているので、もちろん娘も塩味派で、お弁当のおかずに甘いたまご焼きなんて考えられない、と言う。

 

たまご焼きを焼くところをいつも横から見ていたから、自然に作れるようになっていた。

 母が、台所に立っている横で、私はいつでも喋りたいことを喋っていた。

母が卵を割って盛大に菜箸で音を立ててかき混ぜる。チャッチャカ、チャカチャカ!

チャチャチャ!!

年季の入った嫁入り道具のたまご焼き器は、充分に熱してある。

そこに、じゅわーーー!!と大きな音と共に卵が投入されて、手早くたまご焼き器が回って、卵液が薄く行き渡る。

ぷくぷくと卵がところどころ膨れるのを、母が菜箸で穴を開けて潰す。

頃合いを見て、菜箸で奥からくる!くる!と卵を巻いていって、最後に手前にきている小さいたまご焼きをスーと滑らせて奥に寄せる。

油をたっぷりめに卵焼き器に塗って、奥のたまご焼きを菜箸で持ち上げてその下にも塗る。

次の卵液をまたまたジュワー!と流し入れたら、奥の卵焼きの下にも忘れずに流し込む。

くるり、くるりと菜箸を使いながら、卵焼き器を器用に振って、ひっくり返していく。

そのすべての工程を見るのが、気持ちよく、母は卵を手際よく焼きながら、私の話を聞いてくれた。

転校先の中学で、頑張って高得点を取ったのに、先生に

前の学校で習っていたところだったのね、と

言われて悔しかったこと、

嫌われている子の悪いところを、クラス全員に書かせて、その子にみんなの前で読み上げた、ひどいと思った先生の行動…などなど

その日の出来事を話すことで、共感してもらえる安心感もあったし、間違っている!と憤慨した時に、そうだ!と肯定してくれたり、時には、違う角度からの解釈もある、と諭してくれたりと、私にとって大切な時間だったと思う。

こんなに大人になったのに、まだ同じことをすることもある。笑

料理はあまり好きではない娘が、中学の家庭科の授業で、

今度、たまご焼きのテストがあるんだ!

と言って、母に教えてもらって、負けず嫌いの娘は、何度も挑戦していた。

いつもは厳しい先生が、とても褒めてくれた!と嬉しそうに報告してくれたのをみんなで喜んだ。

今でも、たまご焼きは娘の得意料理、である。

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