成長を感じた爽やかな秋

※この記事では、看護の現場で出会った人や言葉を、窓辺で思い出すように綴ります。【癒しの窓辺シリーズ】

「ねー!付き添い買い物にいこーよ〜!」

明るい女の子たちの声がカウンターから聞こえる。

付き添い買い物、とは、敷地内の売店に職員と行くこと。

それまで、行動が病棟内までだったのが、入院生活に慣れて、落ち着いてくると、ほんの少し、お楽しみの時間が増えるのである。

私が担当している女の子も入って4人。

「よし、じゃあ、私と行こう!」

「うん!移動販売で買いたいの!もう来てるかな!」

ウキウキと笑顔で階段を降りて行く。そんな姿を見ると、ほんとにどこにでもいる女の子達、なんだけどなぁ…

病院には、小さな売店はあるけど、売っている種類はほんの少し。

最近、移動販売車が来てくれるようになって、買える物の品数が格段に増えた。

病院の他に、地域を回っているから、お刺身とかまで買えてしまって、

え!それ、病院で食べるの…、今日中に食べてね!

と声をかけたりすることもある。

いくら内科の病気がないからって…

さて、女子たちは財布の中身を確認したり、あれこれと忙しく買い物をし始めた。

そんな光景を少し離れた位置から見守っていたら、ふと

「こんにちは」

と笑顔で挨拶をしてきてくれた人がいた。

忘れもしない、かつて私が担当していた女の子、マキさん(仮名)だった。

落ち着いた表情で、穏やかな笑みを浮かべていた。

「あら、マキさんじゃないの。お久しぶり、元気そうだね。」

「はい。今日は、デイケアで来ました。さっき、みんなで畑で採れたかぼちゃでたくさんご飯作って食べたから、もうお腹いっぱいなの。」

私は、学生時代を思い出した。苦しい看護実習期、唯一、ホッとできたデイケア実習。

回復した患者さんたちが、病院に通って、好きな活動をする。スポーツをする人、音楽を楽しむ人、おしゃべりを楽しむ人、いろんな人がいて、その中で「農業チーム」があった。

一緒に畑まで歩いていって、畑の作業をしながらお話をした。

「病院のお祭りの時は、ここで採れた野菜で料理を作って振る舞うんですよ。ぜひ、お祭りも来てください。」

と声をかけてくださったのが嬉しかった。いい笑顔をしていた。

穏やかなその人も、かつては入院していて、とても具合の悪かった時期があったんだと教えてくれた。

とても想像できないけれど…。ここまで回復して、こうして居場所があるんだな。

心が温かくなった。

一面では、精神疾患を抱える患者さんだけど、こうして笑顔で人と交流できる健康な一面も持っている。

「人」とはいろんな要素で構成されていて、一見、矛盾していることも同居していることがある。どんな人にも健康な面があって、「患者」として見ているだけでは見えないものがあることを教えてくれた。

買い物をしていた女子たちが帰ってきて、マキさんと嬉しそうにおしゃべりをし始めた。

「わぁ!おしゃれ、このスカートかわいい!!」

マキさんは、秋らしく黒のベロア調のロングスカートにブーツを合わせている。

「大人になったわよねぇ。あの頃は、私はもう成人なんだから、なんでも自分で決められるの!って言ってたよねぇ。笑」

「はい。あの頃は、具合が悪過ぎてあんまり覚えていないことも多いんですけど、そんなこと言ってましたよね、まだまだ子どもなのに。笑。

今は、二十歳を過ぎて、なんでも決められるけど、責任もありますよね。」

ええ…こんなことを言うようになったんだ、と感慨深く、彼女の笑顔を見つめた。

「私はね、こんなふうに回復して外来で会えるのが、本当に嬉しいのよ。大変だった頃も知ってるからなおさら。よかったわねぇ。」

話していると、一緒に買い物に来たユイさん(仮名)が目の前で今買ったばかりのアイスをかじっている。

「私ね、退院決まったんだー、退院したらまた働くんだー。お金、使い過ぎないようにって言われたのに、こんなに買っちゃった。」

「あんたね。」

「わかってるよー、ちゃんと、最初に家賃分を取っといて、残りを使えばいーんでしょー。」

「この子、パチンコ行きたいって言ってました!」

「あーーー!!そんなこと言ってんの!ダメだからねーーー!!」

「わかってるよ!わかってる!帰ろ!!」

マキさんと笑顔を交わして、羊たちを追って病棟へ帰った。

時々、問題を起こすこの子達も、いずれ、こんな爽やかな驚きを運んでくれる日が来るだろうか。

期待しているよ。

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私のブログでは、子育て卒業後の”自分らしい毎日”をテーマに、看護・家族・猫・ポタリングなど、日々の小さな挑戦と気づきを綴っています。

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