夏休みに預かった、小さな命|ヤマメの卵を育てて放流した思い出

※この記事では、家族との日常の中で感じた成長や想いを綴っています。

通勤途中、駅で子どもたちが川でつかみ取りをしているポスターが目に止まった。

ああ、夏休みだもんね…

実家の隣町に小さな水族館がある。

内陸の地元の生き物を紹介する水族館だから、よくある大きな回遊魚の水槽などはない。

それでも、利根川水系に生息する大きなハクレンがいたり、亀を触ったり、鯉に餌やりをしたり、と子どもたちは大好きだった。

ある日、ヤマメの卵を配布する、という夏休みの企画を知った。

ええ?

ヤマメは、川の上流に棲む魚。

その魚の卵を持ち帰って、家で孵化させて、稚魚になった頃、再び山の上流に集合する、というものだった。

魚好きの息子にうってつけだ!と思って、知らせたら、年少さんの息子、やるやる!二つ返事。

家族で水族館に行くと、けっこうな人数が集まっていた。卵の扱い方について、職員さんが丁寧に説明してくれるのを、息子は真剣な眼差しで聞いていた。

水温が高いと死んでしまうから、水槽を保冷剤で冷やすか、冷蔵庫の野菜室に入れて観察するようにと説明されていた。

幼稚園に行っている間は、私が温度に目配りする。責任重大…である。

卵の中に魚の目が見えるようになり、小さく動く姿まで確認できる。

そして、パッと稚魚になって泳ぎ出す。

でも、白く濁ってしまった卵は、生まれることができなかった命。

私たちは、金魚を飼っていた時の酸素を送る機械を入れて、毎日冷やしながら、観察を続けた。

「少し大きくなったね!元気だね!」

そんなふうに大切に育てた稚魚たちを連れて、約束の日に秩父の清流に集合した。

「わあ、大きいですね!」

仲間の家族が褒めてくれた。

冷たい川の水に、大切に育てた稚魚たちを、小さな掌から放流する。

「ほら、行って!あ、戻ってきちゃってる!」

ピチピチと跳ねながら、小さな命が川へ帰っていく。

わあ、よかったね。

なんとも言えない、達成感を味わって、みんなで写真撮影して終えた。

小学生になった息子が毎年、夏になると

「あの時の稚魚が大きくなって、孫の孫の孫くらいになってるかな!」

とニコニコしながら話しだすと、家族であの時の光景を思い出す。

「そうだねえ、また行ってみたいね。」

残念ながら、今は、もう、その企画はやっていない。

生き物への愛と夢を育んでくれた小さな水族館。

心から、ありがとう。

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