※この記事では、日常の中でふと感じたことや人生についての想いをエッセイとして書いています。
1986年に男女雇用機会均等法が施行されてから、40年。
施行された頃に就職した女性たちが定年を迎える。
朝のニュースでは、定年が近い男女が集まって、話し合ったり、用紙に書き込んだりしている様子が映し出された。
定年後の生き方についての不安を話し合ったり、これまで自分を縛ってきた価値観を言葉にする作業をしていく。
60代の2人の女性がテーブルについて話し合っていた。
2人は同じ年代だけど、対照的なキャリアの持ち主。
男女雇用機会均等法が施行され、ようやく女性にも社会進出の足がかりができた時代。
Aさんは、大学卒業後に就職して働いていたが、周りは結婚して退職していく。
自身も28歳で結婚、その後も働き続けていた。周りからは、
あなたの家は、妻も働かないと生活できないの?と言われることがあったと言う。
これは強烈な言葉だった。
いわゆる、寿退社、女性は就職しても数年で結婚して家庭に入る。という生き方が定着していて、それ以外の選択をすると、なぜ?どうして?と言われる…
新しい生き方の扉が開いたかに見えたが、社会通念というものは、今日明日で変わるものではないのだった。
結局、出産を機に退職せざるを得なかった けれど、2人のお子さんを育て、再びパートで始めた事務職で、正社員登用に漕ぎ着けたものの、昇進することはなく定年を迎えた。
2人の子どもを育て、働いてきた。だけど、満足感は感じていない。
「流されて生きてきたというか…」
彼女の言葉が印象に残った。
彼女は流されて生きてきたのだろうか?
たしかに、自分で選び取ったルートではなかったかもしれないけど、頑張ってきた自分を認めてあげてほしい、と思った。
一方、Bさんは、会社で認められたいと一生懸命に働いて、表彰された。やっと、認めてもらえた、と実感できて嬉しかったけれど、結婚せず、育児も経験していないことから、
「同世代とは分かり合えないというか…」
どちらも、私には、頑張って掴み取った人生で素晴らしいと思うのに、本人たちは浮かない顔をしている。
これで本当に良かったんだろうか?
他に、道はあったかもしれない。
そんな迷いと戸惑いが彼女たちを包んでいるように見えた。
法律は整備されたけれど、そこに横たわる社会通念、身近な人々の生き方、会社の女性社員に対する考え方など。
見えない壁がいくつもあって、ロールモデルがないまま、手探りで生きてきたのだと思う。
いつでも、最初の開拓者は勇気がいる。
狭い選択肢の中で、時には理解を得られなくても、泳ぎきった先輩たちに、拍手を贈りたい。
かつて、専業主婦を痛烈に批判した本が出版されて、専業主婦と働く女性の対立が話題になった時代があった。
私はまだ、働き始めたばかりだったけど、女性同士で、生き方を批判し合うなんて、ただの消耗じゃないか、もったいないと思っていた。
私は専業主婦を10年ほどやっていた時期があった。子どもの成長をより近くで見つめることができて、本当にかけがえのない時間だったと思う。
でも、その間の社会的キャリアを積めなかったのは少し残念ではある。
同級生の友達は、2人の息子を育てながら、30年以上正社員として働いてきた。
かわいい盛りの幼い息子を預けるのもつらかったし、息子が初めて歩いた時も見てない、と少し寂しそうに言っていた。
子どもを持ち、自分のキャリアも積んでいくって、本当に大変なことなんだ、失うものもあるんだな、と思った。
ニュースの女性たちと違うのは、私たちの世代は、女性が働き続けることへの理解が進んだ時代になってきたことも大きいだろう。
お互い、違う生き方を選び、対立することなく、讃えあうことができる。
ニュースに登場した2人は、私から見たら、すごいな、って思えるのに、どこか満たされない思いが残っているように見えるのはなぜなんだろう?と考えた。
それは、今よりも限られた選択肢しかなかった中で、選び、進まなくてはならなかったことではないか、と思った。
もしかしたら、自分が選んだ「ベター」ではなくて、ベストがあったんじゃないか?っていつも迷っていたから、いまだに悩んでしまうのかな。
でも、私が尊敬するのは、その中であきらめないで、より良い選択と、努力を続けてきたこと。
失ったものをみると、他の人生もあったかもしれないって思うこともあるかもしれない。
でも、振り返ってみると、精一杯やってきた道のりがある。そして得たものがあった。
そこに自分自身の温かい眼差しを送ることができたら、と思った。
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