📖このエピソードはシリーズ最終話です🌻
第1話はこちら→娘のちょうどいい?巣立ちとは
最後の夕飯・あっさりと告げられた別れ
娘が同棲を始める前日。
娘は、テキトーないつもの夕飯を食べながら、
「今日が最後の夜だから。明日出る。」と淡々と言う。
今、言うの、それ?このおかず見ろよ。
「…ふぅーん。あそ。」
娘の部屋は、日常のままとっ散らかってるというのにか?
引っ越すと言っても、うちから20分足らずの県内なのだ。覚悟というにはゆるい。
「ママ、近いから遊びに来るでしょう?」
「え?行かないよ。用事ないもん。」
私の答えに意外そうな顔で娘はキョトンとしていた。
「なんで。」
「なんでも。」
父と寿司と、あの夜の記憶
出ていく方は、いつだって気楽。私もそうだった。
結婚式の前日、花束を自分で作るために遅くまで先生の家にいた私。家に帰ったら少し乾いてしまったお寿司と何も言わない父がいた。
「明日、お嫁に行くからってお父さんがお寿司とって待ってたのよ。」
母がそっと言ったのを思い出した。
招かれざる珍獣、猛暑の引っ越し
「ママぁ、車使っていい?」
・・・甘えたやつだ。
結局、化粧をしている娘の横で、私が荷物を箱詰め。口が開いたままの段ボールを車に積み、娘はようやく、旅行鞄に渋々洋服をたたみもせずに押し込む。
猛暑の中、新築のアパートに到着すると、すでに彼氏が笑顔で待っていた。
小さな衣装ケースひとつ持って。
ぺこり、と爽やかな笑顔でこちらに会釈するのを見て、なんだかそわそわした気持ちになった。
ホントは来たくなかった。別に嫁に出すわけでなし、好きな人ができて、一緒にいたいからアパート借りて。まだ、お花畑のように美しい2人。
心配してついてきちゃったお母さんみたい・・・招かれざる珍獣になった気分。
何も、おばさんが汗かいてさ、世帯じみた生活の準備手伝わなくたっていいじゃん?
引っ越し蕎麦なんていらないんじゃ!
「がんばってね!」
早口で謎の言葉を残して、逃げるように帰ってきた。テンパってたのか、危うく縁石に乗り上げそうになった。
娘を送り出した夏の空の下で
息子の時みたいな、間が抜けた感じでもなくて、離婚した時みたいな土砂降りの気持ちでもなくて。
よかったな…って、晴れやかでホッとした、やり切ったような爽快感があった。
娘を手渡したような、受け取ってもらえたような充足感があった。
娘らしい、晴れ渡った青い空と、熱気に満ちた夏の日。
優柔不断で、慎重すぎて、なかなか進まない私という親を持って、激流を乗り越えるような私との前半戦に、否応なく付き合ってきた娘は、ようやく私と別の道を歩いて行けるようになった。
おめでとう、そして、ありがとう
あなたの新しい毎日が、どうか幸せでありますように。

・・・・でも、まだまだお世話は続きそうです😂
感動的な巣立ち、だったはずですが。
この数日後、夜中にひょっこり帰ってきた娘。
まだまだ、私のお世話は続きそうです。笑

このエピソードはシリーズ最終話ニャン
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